精神病院はいらない!/大熊一夫

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重いタイトルの本と思われるかもれません。数年前、世界ではじめて精神病院を全廃させたイタリアの精神科医、フランコ・バザーリア氏に興味を持ちました。そして精神疾患に対する考え方が日本と欧米では大きく違うということにも興味を持ちました。

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治るか治らないかは、薬よりも社会的ネットワークが大きな決定要因になる

この書籍には付録として、映画「むかしMattoの町があった」の2枚組DVDが付いています。実は書籍よりもこのDVDが目当てでした。ちなみに映画のほうは昨年、札幌で開催された上映会で一度見ています。この映画はもともとイタリアでテレビドラマとして作成され、21%以上の高視聴率を記録しています。

結論から言うと精神病院を廃止することによって入院していた患者はどうなったかと言うと、一般市民として普通に町の中で生活しています。重い症状の患者も例外なく町で暮らしています。

1961年にゴリツィア県立精神病院の院長に就任したバザーリア氏は自由こそ治療だ」を合言葉に入院患者800人を300人まで減らし、1978年には精神病院の新設、新規入院、再入院を禁止する世界初の精神科病院廃絶法(180号法、通称バザーリア法)を成立させました。

この法律によって精神病院が廃止され、精神医療に携わる医療関係者の役割も大きくかわりました。町で暮らすようになった精神病患者の生活を支えるため地域住人をはじめとした様々な人との議論、就労の仲介や新しい仕事づくり、ときには住民や職場でのトラブルの仲介など、患者の苦悩や生活苦と対峙するという仕事が増えました。

精神病院を廃止したかわりに24時間365日休むことなくオープンし、病気や症状の重い軽いにかかわらずいつでも自由に利用でき、往診にも応じる地域精神保健センターを設置しました。そして医療関係者と患者、患者と地域住人との信頼関係を大切にし、病人の生活を壊さないサービスが築かれました。

この話の舞台となったトリエステ県立精神病院があったトリエステ州は、現在の人口が約23万人ほどの中堅都市ですが、少し古い話になりますが、イタリア経済新聞「240ore」が2009年に行った「イタリアで一番住みやすい街」のアンケート調査で、トリエステが1位になりました。詳細は不明ですが、精神障害者が暮らしやすい街づくりの影響もあるような気がします。

◆ バザーリアおよび精神病院廃止に関する書籍
精神病院のない社会をめざして バザーリア伝 / 2,916円 / 岩波書店
イタリア精神医療への道 バザーリアがみた夢のゆくえ / 2,700円 / 日本評論社
自由こそ治療だ―イタリア精神病院解体のレポート / 2,376円 / 社会評論社
精神科病院を出て、町へ――ACTがつくる地域精神医療 / 562円 / 岩波ブックレット
精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本 / 2,592円 / 岩波書店

障害者が暮らしやすい街は、健常者にも暮らしやすいと思います