高齢ホームレスを描いた漫画「傘寿まり子」第1巻/おざわゆき

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主人公のまり子さんは夫に先立たれた80才の女性ベテラン作家、息子夫婦、孫家族と同居中。とくに介護の必要もなく作家として収入もあり、同居する家族もあり、夫に先立たれたことを除けば恵まれていると言えるのに、ある事がきっかけでホームレスとなりネットカフェの住人となってしまいます。家族問題で家に居場所がなくなり元気なので介護施設にも入れない、本人がいくら元気でも高齢ということで身元保証が得られずアパートも借りられない、収入があっても居場所が無い、近い将来、このようなホームレス高齢者が出てきてもおかしくないと思いました。

ある日、4世代同居していた家族の誰にも気付かれないまま孤独死した古い知り合いの葬儀に出席します。その葬儀中に家族間で責任のなすり合いに巻き込まれてしまいます。わが家に戻ったまり子さんが感じたことは、夫と一緒に建てた自分の家なのに子供が生まれ孫が生まれ家の中の中心がどんどんずれている、譲らなければ次がつかえる、終の棲家のはずだったのに長生きしたことで居場所が無くなってしまったという思い、そして孤独死した知り合い家族のイザコザを見て家出を決心します。

介護が必要なのに施設や介護職員不足などで行き場所がない高齢者、住み慣れた家は経済的に厳しい息子や孫世代に譲ることとなり、外に出ようにも身体的に自立できているため介護施設にも入れない、お金があってもアパートも借りられない、がんばって働いて子孫にも恵まれて健康で長生きした結果がホームレスなんて、でも笑いごとではないかもしれません。

まり子さんが家出するきっかけとなった事件と、家出して行き場所がなくネットカフェにたどり着くまでのストーリーはリアリティがあって面白く読めました。しかしネットカフェを出ることになった部分にはちょっと不満があります。ネタバレになるので詳しく書きませんが、たまたま運が良かっただけという感があってもうすこしリアリティを出して欲しいと思いました。

第1巻はまり子さんがネットカフェを出て新しい生活がはじまりかけそうなところで終わっています。高齢になっても健康面の問題もなく経済力もあるがために逆に盲点となってしまう困りごとはたくさんあると思います。まだまだ多くの困難に遭遇しそれを乗り越えてゆくまり子さんを描いて欲しいと思います。第2巻の発売は来月下旬、今から楽しみにしています。